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報告(2018 シンポジウム)

「子ども・若者の自己形成・自立支援について考える

─第三の領域としての子ども・若者支援とは─」(2018.2.3 京都市下京青少年活動センター)の概要

                     生田周二(奈良教育大学)

・報告1:辻浩(日本社会事業大学)「子ども・若者の自己形成・自立と支援―<第3の領域>としての子ども・若者支援とは―」

・報告2:大村 恵(愛知教育大学)「子ども・青年の人格形成とその支援」

・グループワークによる意見交換

 辻報告では、教育福祉の類型と地域教育福祉の機能、「ミクロ―メゾ―マクロ」の支援と連携、<第3の生活領域>の意義と他の2つの領域との関係についてでした。特に、教育福祉の類型(下表)を示し、「子ども・若者支援は③からはじまることは自然なことであるが、④に発展し、さらに②にも及ぶことが大切」とし、教育福祉の視点からの整理をしてもらいました。

 

個別領域重視

多機関連携重視

学校教育福祉

(スクールソーシャルワーク)

学校・学級経営の中での教育福祉

=①

開かれた学校づくりにおける教育福祉=②

地域教育福祉

(総合社会活動としての社会教育)

成人教育の機会均等をめざす教育福祉=③

生活の地域からの教育改革としての教育福祉=④

 また、<第3の生活領域>から「他の2つの領域に反省を迫る」という観点が示され、「人間信頼の形成、進路を拓く学力、尊厳ある働き方、人や自然との共生」などの視点が出されました。

 大村報告では、「自立」をめぐる議論へのいくつかの疑問、青年期の創出と青年概念(3つの選択の自由と3つの課題)、人格形成支援のイメージに関するものでした。特に自立については、「青年期における課題ではなく、生涯にわたる人格形成の課題と理解することが妥当ではないか」という指摘、そして人格形成の支援については次の3領域に分かれ、それらはこれまでの研究所での成果と通底していることが興味深い点でした。

・主体形成の支援=生き方選択のための支援:共同学習、生き方学習、生活史学習

・実体形成の支援=能力獲得のための支援

・本質形成の支援=関係形成のための支援:出会い・ふれあい・わかちあい、仲間づくり

 意見交換では、二つのグループ(◎第三の領域、◎自立あるいは人格形成)に分かれて議論しました。第三の領域として子ども・若者支援を検討する点は、地域概念で捉えられがちな中で、第三の制度的な権利保障の領域として確立することの意味、専門職もそれとの関連にある点が出されました。自立については、それを個の存在・可能性・成長との側面から総体的に捉えようと研究してきた経緯を踏まえ、人格形成という言葉で整理しようとする考え方との整合性を図っていく必要性があると思えました。

 最後の点については、ドイツの児童・青年援助法第1条第1項においても、「すべての若者は、成長のための支援を受け、責任感と社会性のある人格に育てられる権利を有する。」となっていること、改正された日本の児童福祉法第1条では、「その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られること」などの記載があり、研究としてどのように措定するのかは大きな課題だと感じます。 今回は、大きな枠組みの話でしたが、支援論・方法論の領域、養成・研修システムの領域の議論へとつなげていきたいと思っています。

 

 

 

 

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